漢字のグッズを作りました
古代の礼服に縫われた二つの文様。
「黼」は斧を象り、正しき判断を示す。
「黻」は弓の字のような形をした刺繍で、悪に背く心と分別を表す。
それはただの飾りではなく、君子のあり方を示すものだった。
その精神を現代に甦らせ、汎用性の高いロゴとして新たな存在感を与えた。
毎日に、ちょっとした軸を――そんな願いを込めて。
販売ページ:https://suzuri.jp/miya-kanji/19092645/t-shirt/s/mixgray
ショップ:https://suzuri.jp/miya-kanji/products
雑記
一般的な漢和辞典では、収録字を214種類の部というグループに所属させているはずである。これは清朝康煕帝が編纂させた『康煕字典』での分け方に基づいており、さんずいとかくさかんむりみたいな部首を寄せ集めるとなんとそのくらいの数があるということになる。ちなみに昔はもっと多かった。
高校を卒業するまでに習う漢字の集合はいわゆる常用漢字と呼ばれるものに近いが、それらに慣習的に割り当てられた部首は200種類を少し超える程度らしい。この国で日常生活を送っていれば、今存在する部首のほとんどをお目にかけることができるということになるわけだ。
運悪く日常生活から漏れ出てしまった部首の中に”黹”がある。業の上4分の1に弊の左上を合わせたような形のこの字が意味するのはなんと「刺繍」。部首名も「ぬいとり」と呼ばれることが多い。服の模様や、その模様をつける動作といった文字たちが属する部を構成するため、縫・繍など糸へんの漢字でこと足りる現代日本で日の目を見ることはない。
範囲を漢検一級に広げても、出題範囲に含まれるのは黼・黻の2字である。これらは黼黻(フフツ、ホフツ)という、天子の礼服に施された刺繍の意・転じて美しい文章の意を持つ熟語を構成する。
部首自体のレアリティと画数の多さに魅了された一級受験者も多かろうが、黼黻のさらなる魅力は1文字1文字が別の刺繍を意味するというところだろう。
黼黻の元の意味の通り、黼も黻も袞衣と呼ばれる天子の礼服に施されていた刺繍のひとつである。袞もまああまり見ない文字だが、衣+ハロと見るとパーツとしては単純だろう(衣+公の字体もある)。
「袞龍の袖に隠れる」の袞である。袞龍も天子の衣服を指し、特に龍の刺繍が施されたもの。偉い人の陰に隠れて好き勝手することを意味する。
黼・黻もそれぞれ、斧の刺繍・背中合わせの弓字のような模様の刺繍を意味する。斧は果断、背中合わせの模様は分別や悪に背くことを示すそうだ。
黼は斧の音と何か関連があるのかもしれない。

黼・黻・龍など12の模様が袞衣には縫い取られており、合わせて十二章とか十二文章とか言ったようである。
…
……
………なんで漢検配当なの??え?いつ使うの??
いやまあ、そもそも漢検一級なんて漢検協会の人からも「趣味の世界です」とか言われてしまうような世界ではあるんですけども。
それに黼黻が果断と分別を象徴するというのも興味深い。十二章はそれぞれ天子の持つべき美徳を表すようで、例えば太陽、月、星座の刺繍は人民を明るく照らし祥いをもたらすことを意味する。
優劣、可否などを緻密に判断し、時には大胆に決定を下す。なんだか今のリーダー論にも通じそう。
袞衣を着るような身分ではないが、現代に黼黻を蘇らせたいと思った。とはいえ刺繍はできないし、模様そのままも味気ない。そこでin_works様に作って頂いたのが黼黻モチーフのデザインである。
デザインは販売ページで確認いただけたらと思う。

今後も漢字をモチーフにしたグッズをいろいろ作っていけたらと思う。ご協力いただいた関係者の皆様、本当にありがとうございます&これからもよろしくお願いします。
