魚へんに骨と書く!豊洲市場のおすすめランチと漢字【本まぐろそば 䱻】

グルメ

くらしと市場

旅行先ではスーパーマーケットに行くことにしている。土産物屋も楽しいし色々見て回るのだが、地元の方々の食生活に直に触れる方がその土地の素顔に触れられる気がしている。鮮魚コーナーとかお総菜コーナーなんかは地域やそのチェーンの特色が出ており、見ているだけでも飽きない。
旅行ガイドには載らない「暮らしの文化」がそこにはあって、思わず手に取った地元メーカーの調味料なんかが帰ってからもその土地の記憶をふと蘇らせてくれることもある。

三重のスーパー、ぎゅーとら

地元の食を扱う場所といえば、市場も外せない。日本各地には輪島や勝浦のように観光客にも人気のある市場が多く、その土地ならではの海産物や野菜が所狭しと並んでいる。海外においても、旅行者が現地の市場を歩きながら食材を眺めたり食べ歩きを楽しんだりする光景はよく見られる。市場はその土地の「食べる」という文化がぎゅっと凝縮されていて、スーパーとはまた違った側面の魅力がある。

現在営業中の市場で最も有名なものと言えば、ここ豊洲市場を置いて他にはあるまい。

豊洲市場。海外の方も半分くらい居られた

築地市場の後を継いで2018年10月に開業。江戸前寿司をはじめとする日本の食文化を支えるだけでなく、国内外から多くの観光客や料理人が訪れる“食の聖地”としての役割も果たしている。

豊洲千客万来と「魚へんに骨」

豊洲 千客万来」はそんな豊洲市場の観光地としての側面を代表する商業施設である。80年余り続いた築地市場の伝統と活気を新たな時代へ受け継ぐために2024年2月より営業し、無料で入れる足湯を始めとする温泉施設や数々の飲食店が立ち並ぶ。

千客万来。大音量の謎テーマソングに出迎えられて面食らった

飲食店は当然海鮮が多いが、ファストフードにカフェ、卵焼きや深川めしのアレンジなどの江戸前系グルメだってあるしなんならバーとかまであった。

こういう場所の例に漏れずいくつかラーメン屋もあるのだが、その中に気になる店名がある。それがこの「本まぐろそば 䱻」。

魚偏に骨で「こつ」と読ませているようだ。事前に千客万来オフィシャルサイトを見た情報によると、スープとチャーシューをマグロから作っているらしい。なんとなく脳内にマグロの血合いを生姜醤油で煮た実家の味が思い浮かぶ。

どんな味がするんだろ!!わくわく!!

「䱻」を食べる

その外観の通り、店内は日本風にまとめられている。昨今のインバウンドの隆盛か、純和風というよりはいくらかモダナイズされてたが。

どうでもいいが店内BGMをよく聴いたらBling-Bang-Bang-Bornの和楽器インストゥルメンタルで笑ってしまった。

鮪を使ったラーメンということでミニまぐろ丼セット1680円にまぐろワンタンなるものをトッピング。インバウンド丼をアホほど見てから来たのですごく経済的に感じた。

気忙しそうな女性に食券を渡しつつ、奥から調理担当っぽい潑溂とした女性の声。逆じゃね?とも思いつつ着席。そして。

すっっごい鮪の匂いする

う、うまそ〜〜〜〜〜!!!!何が凄いってめちゃくちゃ魚の匂いが強い。生臭いとかではなく、とにかく魚!って感じの美味しそうな匂い。この香りの香水とか出たら米にかけて食べたいくらい。…?

焼き色が綺麗なチャーシューが2枚、それにメンマと青菜とあられ。300円で追加した雲呑は3枚も乗っており(デフォルトで入ってた…?)、まぐろ丼と合わせるとしっかり量のあるメニューである。

スープを一口飲んでみると鮪と醤油の味わいが口の中に広がる…というよりは、割と直線性を持って味蕾を刺してくる感じ。第一印象に違わぬ鮪スープである。

雲呑の具のイメージはほぼつみれで、一口齧ると強い紫蘇の香りに包まれる。スープと一緒に流し込むのが美味しい。チャーシューは炙り鮪でタンパク質を感じる食感。焼いた鮪の旨味もあり、あと枚数がちょうどいい。

中太麺はもう少し細くても良いのかな?と思ったが、なるほど具と一緒に豪快に啜り込む食べ方が合ってるんだろうなと発見した。店の雰囲気に引っ張られて一口ずつお上品に食べてしまいましてよ。

じいや!美味しかったわ、シェフを呼んでちょうだい!!をやりたかったが、店内も混んできたしやめておいた。店名の話とか色々聞きたかったが、まあ今後の宿題ということで。

店名「䱻」と字形の衝突について

「本まぐろそば 䱻」は千客万来の開業と同時に開店。2024年2月オープンということになる。この施設は元々豊洲市場の取引開始と同時期に営業開始する予定だったようなので、もしかしたらこの店も2018年頃から構想があったのかもしれない。

店内の掲示やらなんやらによれば、店名の䱻は恐らく本マグロの骨からスープを取っていることに因む造字だと思われる。

䱻がパソコンで出てくるのは元々同じ形の字があってそれがUnicodeに採録されているからなのだが、その意味は想像上の怪魚。

『山海経』によると翼の生えた魚のような形をしていて、旱魃の徴候となるそうである。自殺にならないか?大丈夫か??自分で自分の住処を失ってないのだろうか??翼を持っているということは水の外でも生き永らえるってこと?

…まあとにかく、飲食店の名前として意識されるような性質ではなさそう。

よくよく見ると骨が左右逆

䱻の字をよく見てみると骨と微妙に異なるところがある。上パーツの┌の向きが左右逆になっているのだ。店名のロゴでもそうなっているし、パソコンでもフォントによるだろうが骨と左右逆に出力されることがほとんどだと思う。

䱻と骨(日本で出力したもの)とじゃ向きが違う

䱻は日本産業規格によって定められたJIS漢字に入っていない。漢検1級の範囲となるJIS第1第2水準どころか、卺とか櫜とか普段お目にかけることが難しい第3第4水準にすら登録されていないということだ。

上パーツを┐のように書く(以下┐骨と呼ぶ、日本の字形は┌骨と呼ぶ)のは簡体字で採用されている字形であり、現代中国語では骨もそう書いている。

それぞれの骨。見つめ合ってるみたい。画数を減らす役割もあるそうだ

恐らく䱻が日本でほとんど全くと言っていいほど使われていないので、Unicodeには中国語での字形で採用されたということだろう。それ以上はあんまり調べてないが。

「䱻」の存在を知ってた?

そう考えると一つ謎が出てくる。店のロゴも┐骨ということは、魚と骨をくっつけた文字が既に存在していると店側は知っていたということ??

単純に魚と骨で造字したなら、ロゴも魚へんに┌骨とすればよさそうである。┐骨になっているということは、中国語の字形が何らかの形で影響を与えているはずである。

いくつか考えられる可能性として
①創業者が中国の方で元々┐骨をスタンダードだと考えていた
②元々䱻の字の存在を知っていた。意味はともかくとして形がぴったりだったため、既存のフォントをもとにロゴに利用した
③店名を決めた後で既存の字だと発覚。魚へんに┐骨は旧字体みたいなものかーと認識して使用
④単純な誤字
などがありそう。

運営母体は株式会社ドリームフーズというところらしい?どこかで機会があればこの辺の話を伺ってみたいところである。

〇店名の名付け親は?
〇店名はいつ決まった?
〇既存の䱻を知っていた?
〇骨が左右逆になっている理由や経緯は?

ユニークな店名 鱻、弥助

なお、千客万来にはもう一軒(せん)という珍字を使った店もあった。

「鮮」と同じ意としてフレッシュだったり数が少ないことだったりを表す鱻であるが、この店では炙りや燻製などの魚を取り扱う。

非常に魚魚しい(?)ロゴ

鱻に元の字の通りかつ字形からは類推しづらい「セン」の読みを与えていることから、恐らく造字というよりは既存の字を流用した気持ちのほうが強かったのだろう。

アブラボウズの燻製は程よく脂が乗っていて美味しかった。芯まで熱を通してほしくはあったが。

来店こそ叶わなかったもののこんな漢字(?)もあった。

わかるかな

中央のはんこ、及び英語表記には「鮨 弥助」とある。そう、右側のものは「yasuke」のアルファベットが漢字様に組み立てられたものだ。

こうした漢字風の英語はいくつか例を見たことがあり、別でまとめられたらと思う。

おわりに

豊洲千客万来の「本まぐろそば 䱻」においては既存の字との衝突はあるものの、魚骨スープを使用したラーメンの個性を押し出すため造字をされた蓋然性が高い。

字体に違わぬ魚の旨味をこれでもかと抽出した一杯、是非とも召し上がって頂けたらと思う。

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