部首の新たな使い道。ウカンムリクリップなるものを買った

雑記

世の中には無数のランキングがある。“好きな鍋料理”とか“旅行したい都道府県”とか。

その中でもわけわからんランキングの筆頭は、松葉杖に使えそうな漢字の部首ランキングであろう。

そんなもんどこの調査機関が調べたのかというと、爆笑レッドカーペットというお笑い番組でバカリズムがやっていたネタのひとつだ。そこでは阝(阜)がトップにランクインしており、その下が耳(耳へん)だったかと記憶している。最近は手術の影響で松葉杖をつく生活をしていたが、なるほど一本足で支える構造は脚の補助として非常に都合がいいなあと感じる。杖ってよくできてる。

個人的にはハンドルの形も鑑みて耳偏を携えて歩きたいところである。杖をついているときは段差とか周囲のアクシデントとかに細心の注意を払って歩かなければならないのだが、耳偏なら雑踏の音もよく拾ってくれそうだ(?)

ちなみに最下位は魚へんだった。バカリズムのフリップには下部の点がバラけて収拾がつかなくなっている怪我人が描かれていたと記憶している。あんな形の杖を病院で渡された日には、それこそ陸上ではのたうち回ること請け合いだ。

漢字はもちろん文字であるので骨組みを物理的に使うことは想定されてないし、こんなのは後世の人が勝手に加えた遊び心にすぎない。

東京メトロは2016年に「あなたのマナー、いいカンジ!?」と題した一連のマナー啓発ポスターを作成しており、ポスター内では特定の漢字一文字に物理的な実体を持たせている。

列を「列」として使用している

街中を歩いていても、このような例は企業や店舗のロゴなどでもごまんと見ることができる。

筆者も一時期流行ったテンセグリティ構造(浮遊圧縮構造)が「互」の形に似ているということでこんなおもちゃを作ったりしていた。

そのバラエティの多さと歴史の長さ、形・音・義を持つ性質上、漢字は歴史上もっともその形を使って遊ばれてきた文字と言っても差し支えないだろう。

前置きが長くなってしまったが、最近こんなおもちゃを買った。その名もウカンムリクリップ。

UKANMURIって書いてある

パッケージにはバンダイナムコと書いてあり、吸収されたのだろうか、サンスターというメーカーの製品である。画材屋の棚でふと見かけて一目惚れしてしまった。恐らく文房具ショップにはあるだろうし、また下記リンク内にAmazonなどECへの導線もあるので、気になったら買ってみてほしい(アフィリエイトは面倒くさい)。
https://www.sun-star-st.jp/items/230403061529/

筆者が買ったのはぷちタイプ。従来の4分の1ほどの大きさだ。

本を開いたままにしておくためのクリップということで、つまみと押さえの部分を過不足なく満たすソツのないデザインである。クリップ部分も力強く挟めるバネを利用しており、岩波文庫ならこの通り開いたままがっちり固定してくれる。

本は田山花袋『蒲団』

通常のクリップ(挟む部分が一か所で、その幅を広くとっているものをイメージしている)と比べて「うかんむり」の形にしておくことで、開いた本の真ん中を潰さずに固定出来たり厚めの本を留めることができたりするそうだ。まさかうかんむりにそんな利点があったとは。使いやすい形がたまたまうかんむりだったのか、うかんむりの形をクリップにしてみたらそんな利点があったのかは分からないけれども。

日頃調べ物をするとき、本を複数開いたり本を開きながらパソコンを触ったりすることが多い。ブックスタンドを持ってはいるのだが、正直押さえの部分が弱すぎてあんまり使ってこなかった。結局スマホとかを重しにしちゃうんだよね。

ウカンムリクリップは挟む力も強いので、今後の活躍に期待したいところだ。

おかしいな、挟んでもすぐ取れちゃうな(棒)

……いや通常サイズ一択だろこれ!なんで小さい方買ったんだ!!

たぶん食べかけのお菓子の袋押さえるのとかに使うことになりそう。

さて、部首を杖にする話/東京メトロのマナー啓発ポスターの話/互をテンセグリティ構造にする話があった。このうち文字の意味を遊びに反映しているのは東京メトロだけだ。形・音・義とか偉そうなこと言っといて…。

考えてみたらうかんむりにも、別に何かを固定するとかそんな意味はない。このクリップは形だけうかんむりにされて、うかんむりとしての価値を発揮することもなく、只管本やお菓子の袋なんかを挟み続ける(考えてみたらクリップが挟むというのは一般的に文字が現れる二次元平面に直交する三次元的な営為だ。文字としての役割を果たされぬままあらぬ方向にあり方を拡張され、これはまるでサイボーグみたいだ。深夜2時に何考えてるんだろう)。

このクリップにも、うかんむりとしての自分を思い出してほしい。そして「家屋や建物に関する」という本来のアイデンティティを取り返してほしい。そんな願いを胸に、ウカンムリクリップを漢字に戻してあげよう。

常用漢字でうかんむり(宀部)に属する字は36ある。家とか宿とか明らかに家屋に関係する字もあれば、害とか寡とか宀部に属することをあまり意識しないような文字もある。

いくつかある宀部の文字の中で、ウカンムリクリップでも挟みやすいものは…

女。まあ!お値打ち価格!!の「安」。

…絶対アウトである。

なんか人身売買っぽさを拭えないし、そうでなくても「安い女」みたいだ。いや実際には原義としては安心の方だろうし、家の中を女性が守っていることでセキュリティや心理的安らぎが担保されてるさまを表現した文字なのだろうが。

あと「女」の画像チョイスが悪い。というかこのイラストなんなんだいらすとや。

祭。お察しください。の「察」。お、なんかいい意味そう!

祭は肉+又+示からなり、又は手を意味して示は祭壇の意味のようだ。神へ肉を捧げるところを見せているところから祭祀の意味が現れたのだろう。自信がないのであんまり字源には触れたくないのだが、建物の中で祀りやお祈りを行うことで「隅々までよく観察する」みたいな意味になったと書いてある記述を見た。一旦はこれを信じてみることにしよう。

ああ、程よく遊んだ。何をやってるんだ僕は。

結局のところ、部首を杖にして歩くことも列が列に並んでいることもない。だが“文字で遊べる”というだけで、漢字はまだまだ僕らの生活を支えてくれる新たな側面を出し続けるのだろう。

――そんなことを考えつつ、食べかけのポテチの袋をウカンムリで挟んだ。

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