flashという技術の失伝
おもしろフラッシュ倉庫の話をしたら、いったい同世代の何割が盛り上がってくれるんだろう。
「千葉!滋賀!佐賀!」も「のまのまイェイ」も敬意を払うべき元ネタがあると知りつつも、モナーやギコ猫を眺めながら笑っていたのがもう20年も前らしい。そういえばなつみSTEPの考察とかめっちゃ読んでたな。
因みに一番好きだったのはハクシャクノテンシ。記事を書きながら久々に動画を見たがまだ全然涙ぐんでしまう。
原作小説があることを知り短編4話を読み切ったが、米津玄師の「あたしはゆうれい」を思い出した。まあそれはいいとして。
フラッシュ(flash)というのはかつてAdobeが開発していた、Webサイト上で動画やゲームを動かすためのアプリケーションを指す。2020年にサポートが終了してしまいネット上で動くflash動画やflashゲームを体験することはできなくなったため、蛇行する魔球や消える魔球を投げてくる5歳児に泣かされたりといった僕らの青春のほとんどが今はもう失われてしまった。
⿰魚狂?とあるflashゲームで見かけた文字
flash全盛期の頃は個人的にはちょうどブラインドタッチの練習をしていた時期であり、flash製のタイピングゲームをいくつかやっていた。その中に「SAKANA TIPE」というゲームがあった(誤植ではない)。残念ながら今はサイトごと閉鎖しているようだ。

画像の緑色の枠内の漢字のいずれかをタイピングしていくのだが、そこに読み仮名は一切書かれていない。魚偏の漢字が読めなければそもそもゲームを進めることすらできない、なんともハードコアなゲームだった。
桃用漢字の記事でも少し触れたとおり、魚偏の漢字自体は見慣れたものが多く、画像内の漢字も鯵や鰤などオーソドックスなものや鯡や鰍など少し見慣れないものまで大体は読めるものだった。というか読めなくても後で調べたらわかるので。ハードコアとは?
ところが一つだけ、調べても出てこない上に子供の頃より多少は語彙が増えた現在に至るまで全く見当もついていない漢字がある。それが魚偏に狂、サムネイルに掲げた文字だ。
初見のときは面食らった。湯呑みにも難読漢字集の類の本にも、果ては漢検1級の参考書にすらも載っていないのだ。当時はゲーム内に解答の掲載がなかったと記憶しているし、「魚へん 狂」で検索しても何も手がかりは得られなかった。
なんなら、ゲームのコメント欄だかなんだかでも「狂のやつなんて読むんだよ!」みたいな阿鼻叫喚があった気がする。
色々試した記憶がある。そのまま「くるう」だとどうだろうと思ったり(もちろんダメだった)。「ぐる、ぐれ」と読むんだみたいな記述があった気がしたのでそれを入力したり(もちろんダメだった)。筆者のオリジナル漢字では?と思い、ゲーム名をそのまま入れてみたり(もちろんダメだった)。
リサーチ力もボロッカスだったので、八方塞がりのまま記憶の片隅に置いたのが20年前くらいだろうか。
20年越しの「魚へんに狂」調査
今試しに「魚へん 狂」でググってみると、2007年頃のYahoo知恵袋が見つかる。
魚へんに狂って書いて、なんと読むんですか??そもそも、そんな漢字っ… – Yahoo!知恵袋
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1312751833
魚へんの漢字について – 魚へんに『狂』ってなんて読むかわかりませんか?漢… – Yahoo!知恵袋
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1210709197
特に下の方は、某サイトの魚へん漢字クイズで見かけたとあり恐らく僕と同じようにネットを彷徨いし者だったのだろう。
知恵袋の回答ではこの字はJIS漢字にすら入っておらず、大きい魚を意味する「キョウ」と読む文字で……いやいやこれが正解なわけなくない??
たしかに文字としては正しいのだろう。回答者を貶める意図は全くない。ただゲーム内の他の文字は訓というか魚の名前を答えさせるのに、これだけ単純な音読みってことあるのか?というか「キョウ」って入力するのくらい当時の僕はやってたはずだ。やってると思う。…恐らくやってた。
それにサイト内の他のコンテンツは難漢字に寄せたものではなく、斯様なマイナー漢字が出題されるというのも何処か判然としない。魚が狂うという字体に惹かれて出題したとしても、音読みそのままはあまり芸がない気がする。
なお手元で一番大きい辞書を引いてみると、知恵袋と同じように「大きい魚」を意味する文字が出てくる。また、⿱狂魚 という異体字もあるらしい。
サイトの記述を掘り返す
「SAKANA TIPE」はakoustam-musicというドメインのサイトであり、先ほどの通り既にサイトは閉鎖済みっぽい。どうにかこうにか探してみるとご本人のSNSなども分かるのだが、この漢字に関する話題は見当たらなかった。
何かヒントが得られないかと思ってWayback Machineを見てみたところ、このタイピングゲームの他にも魚へんの漢字を扱うゲームがいくつかあった。
ゲーム自体のページもアーカイブを取得できるのだが、SAKANA MANIAというゲームの全問正解者ページ(「さかなマニア」という称号を得られるらしい)に「魚狂の正体はこれかw」「さかなまにあって…」というコメントがある。そして以下のスクショを見てほしい。

これ、あれかな?SAKANA MANIAという称号に対して⿰魚狂 というオリジナル漢字を当てたのかな?それでタイピングゲーム内では特に断りを入れず(見落としているだけという説も)しれっと問題に混ぜたのかな?
…などとあれこれ考えていたが、Yahoo 知恵袋でこんな質問を見つけた。
魚の名前タイピングhttp://www.akoustam-mus… – Yahoo!知恵袋
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1210977042
今までの苦労は何だったんだ。
ということで、⿰魚狂 は「さかなまにあ」と読むそうだ。15年来の謎が解けて非常に気持ちがいい!!
ここにも⿰魚狂 が
ところで、「魚偏に狂」で検索していたら2024年にデザイナーの方が作字されている例を見つけた。
これは依頼を受けて作られたもののようで、魚へんに狂と書いて釣りのジャンキーのことを指している。魚へんに釣りの意味こそ込めているものの「さかなまにあ」と発想が非常に近い。
マニアというのはギリシャ語で「狂気」を意味するμανίαが語源だ。熱狂、狂信者、狂愛なんて言葉もある。狂うくらい何かを愛せるのは羨ましいことでもあるなあと個人的には思いつつ、擱筆とする。

