他人が漢字で遊んだものを見るのが好きだ。企業やイベントのロゴではキャッチーさやデザイン性を求めて字画とイラストを融合させているものをよく見かける。
団体によるもののみではなく、個人特有の当て字なんてのもある。夏目漱石が「馬尻(バケツ)」とか「兎に角(とにかく)」とか特有の文字遣いをしていたのは有名だが、歌詞や小説などを見ても今でもこういったことは行われている。

果ては個人オリジナルの漢字なんてのもある。これを漢字と呼べるのかはさておき。

オリジナルの漢字というと真っ先に思い浮かぶのは則天武后による則天文字で、⿱明空 なんか歴史上則天武后ただ一人のことを表すためだけにしか使われていないというめっちゃかっこいい文字だ。
ちなみに則天武后の名前に使われる「照」の異体字みたいなもんである。
こういった類の特定の位相完全オリジナルの文字は現代でもちらほら見かける。
今こういった類のおもしろい文字を探すのに最も適しているのは街中だろう。僕は日頃から看板とか掲示の文字を撮り溜める性癖があり、初めて訪問するエリアではわざわざ文字を探しに散歩しに行くことすらよくある。
SNSでちまちま放出したりしていたが、管理もめんどうなので月単位くらいでこまめに一部を公開したい。ということで2025年9月にその辺で撮った文字たちをいくつか見せびらかさせてもらう。

コインパーキングなどで、軽車両専用の駐車エリアを見かける。そこには大体「軽」と書いてあるが、筆画を大幅に省略した「圣」という文字も見られる。
同じように経を略したものである。
@福島県喜多方市


またまた略字。路面に太い文字で書いたり金属の板を打ち出したりに際して、筆画が少ない方が都合がいいんだろうな。
あと、太い筆画が複雑になるとごちゃごちゃになって一目で読み取れないという問題もあるかも。
@熱塩駅の展示

常磐線のポスターロゴ。適度にデフォルメされ、また磐とか画数多くてゴツい字に柔らかな印象が与えられる。
ちなみにポスター下の英語の表記を見ると察せる通り、「常磐線の」ではなく「常磐線のーーー!」と書いてあるみたい。

こういうのが一番テンション上がる。ゅ+日のオリジナル漢字(?)である。⿹ゅ日 と書けばいいのか?いや「ゅ」の縦画がないか。
ふりがなみたいな位置に「ピーマン」とあるが、明らかに「旬」を意味する文字だろう。というか他の野菜のポスターもあったし。
バカでかい惣菜に多種多様の寿司で僕らの胃袋を捕らえて離さないスーパーマーケットチェーンのロピアで見かけたポスターである。下部の八百屋の店名のような文言はPB(プライベートブランド)の一種と認識している。
せっかくだし⿹ゅ日の野菜の一つでも買っておけばよかった。

篆書風のロゴとアンビグラムのようなイラスト。飯盛本店とあり、喜多方市の栄螺堂という観光名所にある土産物屋だった。
上部のイラストが栄螺堂本体であり、残念ながら何かの文字を象ったものではなさそうだった。でもかっこいいので好き。


これまた栄螺堂近辺で見つけた略字たち。馬の点部分は横一画で書くのをよく見るが、縦画で書いたものはあまり見たことがなかった。こういう微細な差異についても、後になって全く違う場所で同じ字体(字形)に巡り合ったりするもので文字の蒐集がやめられない理由のひとつ。
城は完全に初見。

篆書体の喜多方。どなたの揮毫によるものかを見損ねてしまった。ぱっと見では現代の字に復元できない「方」を一番目立つ配置にしているのもデザイン性を高めている気がする。かっこいい…
こういうの好きなので全駅でやってくれないものだろうか。
下の「こくさいきょうりょく」は「喜多方発感じる漢字あそび」の大賞だそう。奇しくもYouTubeチャンネル名、ブログ名と被ってしまった。しかもこちらは第69回ということでおそらく僕より大先輩である。謹んでご紹介させていただきます。
次回は参加してみようかな。


せいたかどうじ。別に背の高いこどものことではなく、チェータカの音写。
不動明王の眷属の一人を指すらしい。不動明王の真言である唅(かん、この一音節の真言を種字(しゅじ)というらしい)から生まれたんだって。
なお、調べてみると画像で制吁迦となっているところは制吒迦または制多迦、制詫迦と書きそうである。音訳だろうし、吁(「ウ」とか「ああ」とか読む)が当てはまる感じもしない。喜多方市の熊野神社にあったもので、再度確認しに行きたくなってしまった。

普通に読むなら絞織…?と思いつつ、下の布は絞に見えない。よく見ると絞りだったりするのか、はたまた別の字なのだろうか。そもそも下の布なんも関係ない??
そして異体字なのか、単なる誤字なのか。まあ両者の区別も曖昧と言えば曖昧だけど…
浅沼さんの下の名前は読めない。くやしい。

朴(ほう)。言うまでもないかもしれないがほおである。いや語源を辿るとホウなのだろうか?
…とか調子乗ってたので調べてみたが、語源は包に関わる上に普通に「ほう」と表記している例がいくつか見られた。本当にごめんなさい。
朴は常用漢字表では「ボク」音のみ認められ(素朴のボクだ)、別に「ほう」だろうが「ほお」だろうが社会通念上以外の理由では「間違い」ではないのかもしれない。
こうなると寧ろ「ほお」の音を獲得した過程も気になるな。
ともあれ、ここでは誤読かPOP書いた人が疲れてた説も提唱しておきたいところである(負け惜しみ)。新宿にて撮影。

蒸留のこと…?と思ったら、本当に「低温浄溜」なる独自の技術を有しているようだ。
今気づいたが「浄酎」という酒の紹介文言だ。日本酒と焼酎の融合みたいな酒らしい。
珍しい文字遣いをしているものだし、飲んでおけばよかった。今後店で見つかるかな…?

美食旅(ガストロノミー)、それに食器があしらわれた文字たち。
ガストロノミーは美食学みたいな意味で、正直分子ガストロノミー以外での用例を聞いたことがなかった。
食の交互に置かれたナイフなんか素敵なデザインだと思うのだがどうだろう?

そしてガストロノミーでドライフルーツの柿を買った。愁秋(あき)。品種名ではなく商品名である。
羽茂(はもち)地区で穫れた柿のみを干して作った佐渡土産みたい。
厳選しようと思ってたのについつい選びすぎてしまった。今後も定期的に景観文字の共有はしていきたいが、運用でパンクしないようにしたい。嬉しい悩みである(恍惚)